この記事↓を読んだのが2週間前。
現代ビジネス「日本一の過疎」に韓国人が殺到!〜「田舎の小さなパン屋」が熱狂的に支持されるワケ
居ても立ってもいられず、はるばると鳥取へ。
紹介されたこの本↑も増販中とのことで手に入れることもできずに、読まないままにそのカリスマ的人気だというタルマーリー(鳥取県八頭郡智頭町)に来てしまいました。
元々幼稚園だった場所だそうですが、過疎化により廃園になってしまいその広い敷地の再利用としてタルマーリーが入居したそうです。
長い廊下をうまく改装し雰囲気ある店作りがなされています。遠くは東京や関西(私たちもその一人ですけどね・・・)からもはるばる訪れる方もいらっしゃるそうです。その理由はいろいろあると思いますが、こだわりの美味しいパンを食べさせるだけの理由では決してないでしょう。
レンガで作ったピザ釜。一度ピザ焼きを手伝ったことがあるのですが、釜にしっかりと熱を蓄熱させ、その輻射熱により素早くピザの上面を焼くという単純なように見せかけて全体に火を通らせるのが難しい作業なのです。
実は、パンを醗酵させるドライイーストとお酒造りなどで使う酵母は同じ種類のもの。しかし、狙いどおりの風味や焼き具合に仕上げようと思うとたくさんの種類の酵母を知らなければなりません。市販のドライイーストを使うと、独創的なパンは焼き上がりません。どこで買っても同じようなものになってしまいます。いろんな場所に住む自然の酵母をたくさん知っておかなければなりません。「天然酵母」使用と書かれたパンが最近ありますが、あれも天然に存在する酵母をドライイーストのように培養しただけのものです。個性はほとんどありません。
私がタルマーリーに行って気づいたことは「パン職人」と呼ぶ本当の意味です。パン職人とは、パンをこねて、成形し焼き上げる職人の事だと思っていました。それだとパン工場で働く人は全てパン職人です。本当のパン職人は、天然の様々な種類の酵母をプロデュースし狙いどおりの味や形をしたパンを作り上げる人のことだったのです。酵母は元気のあるときもあれば、機嫌の悪い日もあります。それをお客様が買いに来る日に確実に作り上げる技術が必要なのです。パン工場の人とは根本的に違うのです。
焼き上がったばかりのピザ。
一緒にタルマーリーの自家製ビールもいただきたかったのですが、車を運転して帰らなければならなかったので飲めませんでした。今度は近くで一泊する予定を組んで飲みたいと思います。
パンを作る酵母は、酒造りと同じ種類のものだと申し上げましたが、特にパンとビールは小麦と大麦という違いはありますが、同じ麦という作物を使う似通ったもの。非常に近い職人技が必要なのだそうです。本当の意味でのパン職人だったら、ビール職人の苦労もわかるのでしょう。
だからパン職人の意味を初めて気づかせてくれたタルマーリーの作るビールを必ず味わってみたいのです。
ビールの代わりに、近くの牧場で作っている牛乳をいただきました。北海道が好きで何回も行っていますが、本場の北海道でも飲めない味です。牛乳を飲みにタルマーリーに行ってもいいと思えるくらいです。
店主の渡邊さんに本も読まずに来たと申し上げると、お店で確保している貴重な一冊をサイン入りで売っていただいた。酵母に対する愛情がひしひしと伝わってきます。本の内容は読まれる時の楽しみに置いておきますが、キーワードである「腐る経済」とは、今の経済が腐っていると主張しているわけではなく、彼らが動かしている経済活動が「早く食べないと腐ってしまうもの」を扱い、今の金銭至上の腐らない経済活動(お金はいつまで経っても腐らない)は楽しくない。彼らにとっては腐るパンが動くのが経済であって、それをいただく事が幸せであり、楽しい事だと説いています。数時間で読めるくらいの読みやすかったです。「うんうん」と頷きっぱなしでした。
日本でも物凄い反響があったそうですが、韓国の若者にも物凄い反響であったのも大変によくわかります。「お金の量=幸せ」と思っていたのが、実は「人が提供する温かいサービスや商品=幸せ」だったのだと、若い世代が気づきはじめた証拠なのだと思います。
実はこの本を読んだあとに後悔した事が1点だけあります。このタルマーリーのパン作りを語る上で一番重要なパン「和食パン」を食べてこなかった事です。でも次回までの楽しみが出来ました。
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